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インチュニブintuniv(グアンファシン)の新規ADHD保険適応補足

 インチュニブ(一般名グアンファシン塩酸塩)はADHD(注意欠如多動症、注意欠陥多動性障害AD/HD)に対する保険適応を取得した選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬で、宮木教授の著書「発達障害を職場でささえる」 (東京大学出版会 2018)でも2017年から小児(6歳以上18歳未満)に対して保険適用され保険診療で広く利用できる旨と「近い将来に成人への適応も認められるようになると思います」という見通しが紹介されていました。

 その後18歳以上のADHD患者を対象とした臨床試験が行われ、2019年6月からは成人への適応も認められるようになりましたので、当ホームページでの解説文http://riomh.umin.jp/mission.htmlを更新するとともに、成人の患者さんへの注意点を寄稿いただきましたので参考になさってください。
 (注:宮木医師や当団体は、本ページに紹介する薬剤に関連する製薬企業からの研究費や補助金は一切受け取っておりません。論文作成サポートの申し出もお断りしました。)


成人にも保険適応拡大されたインチュニブ錠

 この薬剤はもともとは血管収縮を抑える降圧薬(1984年承認の中枢性交感神経抑制薬「エスタリック錠」)として開発されたもので、交感神経の過剰な興奮を抑えることによって多動性や衝動性を押さえることでADHDにも効果を発揮することがわかってきたものです。
 化学成分は全く同じグアンファシン塩酸塩ですが、エスタリック錠と異なりゆっくりと成分が溶け出していく1日1回の徐放性製剤となっているところが相違点で、作用機序は異なりますがADHD治療薬コンサータもこの徐放性製剤です。

 18歳以上の患者には1日2mgから開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4~6mgの維持用量まで増量するのが標準的な「用法・用量」で、症状により適宜増減しますが1日あたり6mgは超えないこととし、いずれも1日1回経口投与とされています。(CYP3A4/5阻害剤投与中や重度の肝機能障害・腎機能障害がある場合は血中濃度が高まる可能性があるため1日1mgから投与開始)

 注意点としては、本薬剤の使用により時に高度な血圧低下や脈拍数減少が認められ失神に至る場合がありますので、血圧及び脈拍数の定期的な測定が必要とされています。
 インチュニブの投与開始前には心電図異常の既往有無について確認し、心電図異常が認められた場合は投与の可否を主治医に慎重に判断してもらってください。ちなみに房室ブロック(第二度,第三度)のある患者には【禁忌】とされています。
 心血管疾患あるいはその既往歴がある場合、定期的に心電図検査を行うなど状態を慎重に観察していく必要があり、心血管系への影響を示唆する症状(徐脈、失神、ふらつき、動悸等)があらわれた場合には速やかに主治医に相談しましょう。

 インチュニブの急激な減量や中止により、血圧上昇や頻脈があらわれることがあり、海外の報告では高血圧性脳症に至った例もあります。そのため本剤中止時には主治医の指導の下、漸減(ゆっくりと段階的に減らすこと)が必要です。
 インチュニブの漸減には1~3週間程度を要するため、他のADHD治療薬で推奨されているような「短期的な休薬」は行わないように注意してください。

 このような注意点があることや、他のADHD治療薬と違って「不注意」症状には効果を期待できないことに留意する必要はありますが、「衝動性」の問題や「多動性」の問題に対する選択肢が広がることは朗報と思います。
 主治医と相談のうえ、治療の選択肢の一つとして参考にしてください。
(但し従来から申し上げている点ですが、自分の特性を知り、それを自覚して学校や職場に適応する術を身に着けることで問題発生を防いだり、そうした特性があっても支障が出ない環境を整えることが大切であることに変わりはなく、心理療法や社会的なサポートも有用ですから、薬はあくまで補助的に考えていただければと思います。)