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新薬デエビゴDayvigoについて

デエビゴ(一般名レンボレキサント)は米国で入眠困難、睡眠維持困難のいずれかまたはその両方を伴う成人の不眠症に対して適応を持つ睡眠薬で、2020年1月に不眠症治療薬として日本での製造販売承認を取得し、4月に薬価収載されて7月6日に発売となりました。

デエビゴ錠

 不眠症は睡眠をとる機会があっても、寝付きにくい(入眠困難)、途中で目が覚める(中途覚醒・睡眠維持困難)などの困難に苦しむことが特徴で、よく見られる代表的な睡眠障害の一つですが、世界では成人の3割が不眠症に悩まされているといわれています。またその期間も数カ月から数年と長期間に及ぶことが多く、職場での生産性の低下(プレゼンティーズム)や欠勤(アブセンティーズム)といった社会的損失をもたらすことが知られています。

こうした症状に対する薬として、一般的にベンゾジアゼピン系といわれる睡眠薬(抑制系の神経伝達物質γ-アミノ酪酸GABAの受容体に作用して睡眠状態に移行させる薬)が用いられることが多く有効性は確かな良い薬ですが、この系統のお薬には長期間連続して使っていると耐性が生じて依存状態に陥りやすいという注意点もあります。この薬剤は脳内で覚醒状態に関与するオレキシン受容体(OX1とOX2の2種類あります)に対してオレキシンと競合的に結合します。競合的というのはつまり、覚醒を制御しているオレキシンの神経伝達をブロックして覚醒状態を和らげ、その結果として睡眠覚醒リズムを整えるというメカニズムです。

デエビゴの投与量としては1日1回5mgを就寝直前に経口投与となっており、症状に応じて漸増や漸減は可能ですが、1日1回10mgを超えないこととされています。
 ベルソムラでは高齢者に投与する際は用量を減量する必要があるのに対し、デエビゴでは高齢者でも同用量の投与ができる点が異なりますが、悩む方の多い不眠に対する選択肢が増えたことは年齢を問わず朗報と思います。
 デエビゴの薬物相互作用(飲み合わせ)についてですが、肝臓の薬物代謝酵素CYP3Aをかなり強く阻害する薬剤(抗真菌薬のイトラコナゾールなど)との併用は、本剤の代謝が阻害されて傾眠やふらつきなどの副作用が増強する可能性があるため、患者さんの状態を慎重に観察して本薬投与の可否を判断し、併用する場合には投与量を1日1回2.5mgとします。(慎重な対応が求められますが、併用自体は可能で禁忌ではありません)
 このことは薬物代謝酵素CYP3Aを強く阻害する薬剤との併用が禁忌であるベルソムラとのもう一つの大きな相違点ですが、中等度以上の肝機能障害患者さんには、本剤の血中濃度が上昇する可能性があるため1日1回5mgを超えないように慎重に投与する必要があります。

このような注意点はありますが、睡眠障害・不眠症に対するベンゾジアゼピン系睡眠薬以外の選択肢が広がることは朗報と思いますので、主治医と相談のうえ、治療の選択肢の一つとして参考にしてください。